日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
心肺停止状態から救命し得た上部消化管造影検査後大腸穿孔によるバリウム腹膜炎の1例
須藤 翔小林 隆廣瀬 雄己堅田 朋大滝沢 一泰若井 俊文
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2015 年 35 巻 1 号 p. 119-124

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抄録

症例は66歳,女性。検診で上部消化管造影検査を施行された2日後に腹痛を自覚した。翌日腹痛が増悪したため救急要請し,搬送先病院で心肺停止状態となった。蘇生処置により心拍再開し,腹部CT検査で腹腔内遊離ガスと腸管外へのバリウム漏出を指摘された。消化管穿孔によるバリウム腹膜炎と診断され,同院では緊急手術の施行が困難な状況であったため,当院へ転院搬送し緊急手術を行った。S状結腸に穿孔部を認め,S状結腸部分切除,人工肛門造設,洗浄ドレナージを施行した。手術直後は循環動態が不安定であったが,PMX-DHPを含む集学的治療により敗血症性ショックから離脱し,神経学的後遺症無く術後36病日目に退院した。上部消化管造影検査後に生じる大腸穿孔によるバリウム腹膜炎はまれだが重篤な合併症である。本症例は一時心肺停止状態となったが,迅速な手術と集学的治療により救命し得たので,若干の文献的考察を加え報告する。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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