2015 年 35 巻 1 号 p. 125-129
症例は71歳女性,悪寒・嘔吐・発熱を認め,当院救急外来を受診した。腹部造影CTで脾彎曲部の結腸の壁肥厚を認めた。脾臓に結腸から連続する不明瞭な腫瘤像を認め,結腸癌による脾臓浸潤・脾膿瘍を疑い入院となった。入院後,抗菌薬・輸液で感染制御,精査後に手術方針となったが,入院48時間後に血圧低下を認めた。腹部単純CTで脾膿瘍の穿通,腹腔内穿破,汎発性腹膜炎を疑い緊急手術を施行した。開腹時,膿性腹水を認め,脾膿瘍の腹腔内穿破,汎発性腹膜炎と診断した。腹腔内洗浄ドレナージ・脾臓摘出・横行結腸左側からS状結腸切除・横行結腸人工肛門造設術を施行した。術後,明らかな合併症を認めず,術後28日目に退院となった。結腸癌の直接浸潤に伴う脾膿瘍はまれな疾患であるが,脾膿瘍が短期間に増大し,脾膿瘍の腹腔内穿破より汎発性腹膜炎を併発することを認識し,診断後,早期に外科的処置が必要であると考える。