日本腹部救急医学会雑誌
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特集:破裂性腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療─治療成績と解決すべき問題点─
破裂性腹部大動脈瘤および腸骨動脈瘤に対するEVAR の問題点
─左半結腸虚血への対処を含めて─
葛井 総太郎工藤 敏文井上 芳徳
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2015 年 35 巻 5 号 p. 589-595

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抄録

破裂性腹部大動脈瘤(ruptured abdominal aortic aneurysm:以下,rAAA)の緊急手術成績は必ずしも良好とはいえず,近年,rAAAに対する緊急EVAR(emergency endovascular aneurysm repair:以下,eEVAR)の報告が散見されるが,開腹手術と比較して早期および遠隔期の優位性はまだ確立されていない。2011年8月から2015年1月に当科でrAAAに対しeEVARを施行した11例において,死亡率および腸管虚血発生率は9.1%(1例)であった。不安定な循環動態,腹腔内圧上昇,手術操作による下腸間膜動脈および内腸骨動脈の血流遮断など,rAAAに対するeEVARでは周術期の致死的合併症である腸管虚血のリスクは高く,早期からの下部内視鏡による診断および重症度評価を行い,重症例では全身状態が悪化する前に腸管切除を行うことが重要である。今後は腸管虚血の発症を予防すべく術中の腸管灌流の評価法と下腸間膜動脈の温存法の確立が望まれる。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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