2015 年 35 巻 5 号 p. 623-627
症例は,65歳の男性。嚥下困難を主訴に来院し,精査で下咽頭癌と胸部食道癌の重複癌と診断した。下咽頭癌に化学放射線療法を施行し腫瘍が消失した後に,食道癌に対して右開胸食道切除,腹腔鏡補助下胃管作製,胸腔内吻合を施行した。胸管は横隔膜上でクリップし合併切除した。術後第9病日に右胸腔ドレーンを抜去し,経口摂取を開始した。術後第10病日に両側胸水が出現し,胸腔ドレナージを施行し,性状から乳糜と診断した。禁食,中心静脈栄養,ソマトスタチンアナログ投与などの保存的治療を行ったが,排液量が増加したため術後第22病日に緊急開腹手術を行った。挙上胃管右背側に腹部大動脈を認め,大動脈腹側かつ膵頭上縁でリンパ管を同定し結紮した。周囲にフィブリン糊を塗布し手術を終了した。術後の胸水排液量は減少し,経口摂取再開後も排液量が増加しないため,ドレーンを抜去した。再手術から12日目に軽快退院した。