2016 年 36 巻 3 号 p. 617-622
症例は56歳,男性。直腸癌で腹会陰式直腸切断術を施行した。術後5年2ヵ月目に骨盤内局所再発で下肢疼痛が出現し,化学療法および放射線照射を行った。疼痛は消失し,患者の希望で化学療法を中止するも,2年後に症状が再燃し,セツキシマブを含む化学療法を行い,11ヵ月後に腹満と食欲不振を訴え受診した。腹膜刺激症状を認めず,胸腹部CTで盲腸から下行結腸の気腫状変化,後腹膜気腫および縦隔気腫を認め,腸管囊胞性気腫症と診断した。全身状態は安定しており酸素吸入の保存的治療を開始した。気腫像は徐々に縮小,消失し,第23病日目に軽快退院した。腸管囊胞性気腫症は時として腸管外ガスを認め,治療方針の決定に苦慮する場合がある。近年,セツキシマブが原因で発症した腸管囊胞性気腫症の報告が散見され,自験例の原因もセツキシマブと考えられた。セツキシマブ投与中に腹部症状を呈した場合,本症も念頭に置く必要があると考えられた。