2016 年 36 巻 4 号 p. 773-776
症例は開腹歴のない妊娠22週の36歳女性で,腹痛・嘔吐を主訴に当院を救急受診。バイタルサインは安定していたが,腹部膨満・上腹部の圧痛・Blumberg徴候を認め,腹部単純X線にてniveau像を認めた。血液検査で炎症反応を認め,腹部造影CTで右上腹部に隣接する2つのbeak signを伴うclosed loopと少量の腹水を認め,絞扼性腸閉塞を強く疑った。胎児超音波検査・心拍数陣痛図にて胎児の状態は良好であったため,妊娠継続下での緊急手術を選択。開腹すると,横行結腸間膜に生じた径25mmの異常裂孔を通じて20cm長の回腸係蹄が網囊内に嵌入しており,横行結腸間膜裂孔ヘルニアと診断した。嵌入腸管は用手的牽引にて比較的容易に整復され,肉眼的にうっ血は認めたものの腸管・腸間膜に虚血障害はないと判断して腸切除は行わず,裂孔を縫合閉鎖した。術後は母体・胎児とも経過良好で,術後15日目に軽快退院した。