日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
先天性腎性尿崩症患者に虫垂切除術を施行し厳重な輸液管理が有効であった1例
郷右近 祐介
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2016 年 36 巻 4 号 p. 787-789

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抄録

症例は16歳,男性。既往に先天性腎性尿崩症があり1日10Lほど飲水している。穿孔性虫垂炎と汎発性腹膜炎の術前診断で,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。術中所見は壊疽性虫垂炎であり,穿孔はなかった。術後は血清電解質,血糖,尿量を2時間ごとにモニタリングした。最低限の電解質を補うため,3号液80mL/hを投与し,加えて2時間尿量を5%糖液で等量還元した。制限なく飲水再開とするまでの12時間で輸液量6,670mL,尿量7,000mL,血清Naは138mEq/Lから148mEq/Lで推移した。術後第1病日に食事再開し,経過良好で術後第3病日に退院となった。本疾患患者に一般的な細胞外液による輸液管理を行えば高浸透圧血症により重篤な神経学的後遺症を残す可能性がある。手術施行を余儀なくされた場合,頻回の採血・尿量モニタリングを行い,可及的早期に水分再開を図るべきである。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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