日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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症例報告
院内多発外傷連携によって救肢した外傷性腸骨動脈閉塞症の1例
伊藤 直西川 佳友春木 伸裕江田 匡仁原田 幸志朗川上 賢一高須 惟人辻 秀樹
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2016 年 36 巻 6 号 p. 1099-1102

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抄録

四肢の急性動脈閉塞症は疼痛・蒼白・運動麻痺などの虚血所見を示す。今回,腹部鈍的外傷の症例で下肢虚血の症状・所見がなく,腹腔内損傷に気を取られたため全身CTの初期読影で腸骨動脈閉塞が診断できなかったが,すみやかな放射線科読影により救肢できた経験をした。55歳男性が交通事故で腹部鈍的外傷を受け,強い腹痛を訴えたが下肢虚血の症状・所見がなく,CTで消化管穿孔・腹腔内出血と診断して緊急手術を始めた。術中に放射線科医が左総腸骨動脈閉塞を指摘し,血行再建を行い救肢した。緊急治療が必要な疾患に対し早期に治療介入するには,外傷時全身CTでは系統的な初期読影が必要であり,「FACT(Focused Assessment with CT for Trauma)からはじめる3段階読影」は有用である。また,放射線科医による読影・多断面再構築像作成での読影サポートなど,院内多発外傷連携が重要である。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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