2016 年 36 巻 6 号 p. 1125-1129
症例は86歳,男性。1ヵ月前に右下腹部痛と発熱を認めたが,放置していた。その後,症状は軽快したが食思不振が続くため,当院を受診した。腹部CTで腫瘤形成性虫垂炎が疑われたが,腫瘍性病変の可能性も否定できなかったため,精査後にinterval laparoscopic appendectomy(以下,ILA)の方針で外来通院とした。その11日後,再度発熱し当院を受診し,血液検査で肝機能障害および炎症反応の上昇,腹部CTで肝S6に膿瘍形成を認めた。肝膿瘍に対する治療を優先し,肝膿瘍が改善した後にILAを施行した。近年では虫垂炎に続発する経門脈性肝膿瘍はまれである。今回われわれは,腫瘤形成性虫垂炎の経過観察中に生じた肝膿瘍の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。