2017 年 37 巻 1 号 p. 049-052
症例は68歳の男性。既往に遠位胆管癌術後腹壁腹膜播種再発,糖尿病,高血圧症,前立腺肥大症があった。乗用車を運転中に前方に停車していたトラックに追突し胸腹部外傷を受傷し,ドクターヘリで搬送された。来院時造影CT検査で右側腹壁の腹膜播種巣周囲に皮下気腫および腹腔内遊離ガス像を認め,腹壁損傷および腸管損傷が疑われたため緊急開腹手術を施行した。術中所見で腹膜播種巣により腹壁と癒着した上行結腸に全層性の損傷を認め,結腸右半切除,腹壁合併切除,回腸人工肛門造設を施行した。術後は真菌・MRSAによる深部手術部位感染(以下,DSSI)を併発したが保存的に軽快した。しかし,その後リンパ節転移の急速な増悪により術後3ヵ月に在院死亡した。鈍的損傷による結腸損傷の頻度は低く,本症例では胆管癌術後腹壁再発部位への外力が起点となり上行結腸損傷をきたしたことが推察された。