2017 年 37 巻 4 号 p. 637-641
膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy:以下,PD)術後の膵液瘻に続発した繰り返す仮性動脈瘤出血および門脈内血栓に対して動脈・門脈stent留置などの血管内治療を施行し,救命し得た1例を経験したので報告する。症例は67歳の女性で,膵頭部癌に対してPDを施行した。術後第14病日に膵液瘻の診断に至り,第16病日にドレーンより出血を認めた。血管造影を施行したところ,胃十二指腸動脈断端に仮性動脈瘤を認め,この部分にcovered stentを留置した。術後第38病日,第51病日,第75病日にも仮性動脈瘤からの出血を認め動脈stent留置とcoil塞栓を併施し止血し得た。また,経過中に門脈内血栓も認め門脈stentを留置した。最終的には門脈は完全閉塞に至ったが,肝内の肝動脈-門脈シャントにより肝不全に至ることはなく,第146病日に軽快退院となった。