2017 年 37 巻 4 号 p. 647-650
症例は32歳女性。既往歴に子宮内膜症に対する開腹卵巣囊腫摘出術がある。妊娠7週3日に腹痛,嘔吐を主訴に当院へ救急搬送された。腹部エコー検査でキーボードサイン,腹部単純X線検査で鏡面像を認め腸閉塞と診断した。血液検査では腸管壊死を示唆する所見は認めなかったため,絶飲食,胃管留置による保存的加療を行った。しかし入院後も症状の改善を認めず,翌日に単純CT検査を施行し,内視鏡補助下にイレウス管を挿入した。その後は腹痛などの症状は軽減したが,イレウス管排液量の減少はみられず第10病日に腸閉塞解除術を施行した。術中所見で小腸と小腸間膜との間に線維性の癒着を認め,今回の腸閉塞の原因と考えた。癒着を剝離し手術を終了した。術後合併症はなく術後10日目に退院した。退院後の妊娠経過に問題はなく妊娠38週6日に2,840gの児を経腟分娩した。妊娠時の腸閉塞では診断の遅れが母児双方の命にかかわるため,むやみに放射線被曝を避けず早期に確実に診断することが重要と考えられた。