日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
捻転を機に診断された低異型度虫垂粘液性腫瘍の1例
野々村 遼木戸川 秀生上原 智仁野口 純也山吉 隆友岡本 好司伊藤 重彦
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2017 年 37 巻 4 号 p. 667-671

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抄録

症例は33歳男性。上腹部痛を主訴に当院救命センターを受診した。術前の腹部造影CTで虫垂粘液囊腫捻転症と診断し緊急で腹腔鏡補助下虫垂切除術を施行した。切除標本では虫垂は9.5×2.5cmに腫大し,内部より黄白色ゼリー状の内容物を認めた。病理診断では低異型度虫垂粘液性腫瘍(low-grade appendiceal mucinous neoplasm:以下,LAMN)の診断で粘液は粘膜下層までの深達度であった。LAMNは大腸癌取扱い規約で新たに分類された腫瘍である。現在,LAMNの治療法に関して明確な基準はないが,良性悪性両方の性格をもつため,十分なmarginを確保した切除を行った後は厳重な経過観察が必要であると考える。LAMN捻転症例はわれわれが検索した範囲では本邦では15例しか報告がなく,さらに術前に捻転症を診断し得たものは本症例も含めて2例であり極めてまれな症例と思われた。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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