2017 年 37 巻 4 号 p. 677-680
症例は20歳男性。既往歴なし。腹痛を主訴に,当院受診した。腹部全体に自発痛強く,右下腹部に圧痛あり,急性腹症で当科入院した。腹部CTで,骨盤腔の正中から右側に,限局性に造影増強効果の低下した小腸のclosed loopと血管の集束像を認め,小腸の絞扼および捻転を疑い,審査腹腔鏡を施行した。腹腔内には拡張し変色壊死した小腸がみられ,腸管切除を考え開腹手術に移行した。骨盤底に落ち込んだ小腸を手繰りだすと,回盲部腸間膜の3cmの欠損孔に,回腸が嵌り込み絞扼していた。腸管壊死と診断し,欠損孔も含め回盲部末端より5cmの所から口側約45cmの小腸部分切除を施行した。成人小腸間膜裂孔ヘルニアはまれな疾患で,術前診断が困難である。開腹歴や外傷のない絞扼性腸閉塞の症例では,小腸間膜裂孔ヘルニアも念頭に置き,迅速な対応が重要であり,その際に審査腹腔鏡を実施することは有用である。