日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
症例報告
無症状のうちに腹壁内に迷入し,6ヵ月後に診断・治療した誤飲魚骨の1例
筒井 麻衣掛札 敏裕和多田 晋相浦 浩一
著者情報
キーワード: 魚骨, 腹壁内迷入, 誤飲
ジャーナル フリー

2017 年 37 巻 5 号 p. 743-746

詳細
抄録

症例は64歳,男性。6ヵ月前からの臍部の腫脹と2日前からの発熱,腹痛を主訴に受診した。CTでは腹壁内に周囲に膿瘍形成を伴う高吸収の異物を認め,形態から魚骨が疑われた。重症の併存症が多く,待機的手術を予定するも炎症の遷延を認め,入院4日目に膿瘍腔壊死組織のデブリードマンと魚骨摘出を行った。膿瘍腔は腹腔内と交通し,腹腔内を検索したところ,回腸末端から150cmに発赤,硬結を認め,穿通箇所と考えられた。経過良好で術後14日目に退院となったが,改めての詳細な病歴聴取により,臍部腫脹を自覚する前にカレイの摂食歴が明らかとなった。誤飲された魚骨が回腸を経由し,無症状のうちに腹腔内へ迷入した可能性が示唆された。外科手術が有効であったが,誤飲された異物には無症状で経過し,後に合併症を引き起こす場合もあり,術前のCTによる質的評価,診断の手がかりとなる詳細な病歴聴取が有用であると考えられた。

著者関連情報
© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
前の記事 次の記事
feedback
Top