2017 年 37 巻 7 号 p. 1071-1074
症例は72歳,男性。食思不振と嘔吐を主訴に当院に入院した。上部消化管内視鏡検査では十二指腸下行脚まで異常は認められなかったため,イレウス管挿入を試みたが空腸へは到達せず,造影剤を注入してもTreitz靭帯近傍で途絶していた。腹部造影CTでTreitz靭帯付近の空腸に造影効果の乏しい約2cmの腫瘤と,その口側の十二指腸に著明な拡張が認められた。以上より空腸腫瘍による腸閉塞と診断して開腹したところ,Treitz靭帯から約5cm肛門側の空腸に腫瘍が認められたため同部を切除し,肛門側空腸を挙上して十二指腸球部と吻合した。病理組織学検査においてHeinrich I型の異所性膵より発生した中分化管状腺癌と診断された。術後経過良好で術14日目に退院し,S-1による術後補助化学療法を17クール施行した。術24ヵ月後の現在も再発なく経過している。