2018 年 38 巻 3 号 p. 563-565
成人腸重積症は器質的病変を原因とし,悪性腫瘍によるものがもっとも多くを占める。今回,悪性腫瘍との鑑別に苦渋した盲腸粘膜下膿瘍による本症の1例を経験したので報告する。症例は18歳,女性。数日前からの心窩部痛,嘔吐,発熱を主訴に来院。CTでは,回盲部が上行結腸に陥入しPseudo-kidney signを呈していた。明らかな腫瘤や膿瘍は認めなかった。腸重積と診断し,緊急手術を施行した。術中所見では,回盲部・盲腸・虫垂が上行結腸に陥入し盲腸結腸型腸重積であった。肉眼的所見では盲腸に腫瘤性病変を認め,腸間膜リンパ節腫脹もあり盲腸癌の疑いで単孔式腹腔鏡補助下回盲部切除+D2を施行。病理組織学的検査所見で盲腸粘膜下膿瘍と診断。盲腸炎による成人腸重積の報告は本邦では3例であった。盲腸粘膜下膿瘍での腸重積は報告例が少ないが,発熱など感染の徴候がある成人腸重積は本疾患も念頭に置いて診断・治療にあたるべきである。