2021 年 41 巻 4 号 p. 293-296
症例は81歳女性。1週間続く腹痛を主訴に当院を受診した。身体所見では下腹部全体に圧痛を認めたが腹膜炎所見は認めなかった。CT検査では直腸Rsに壁肥厚,周囲脂肪織濃度上昇,腸間膜側への穿通を疑う腸管外ガス像を認めたが,遊離腹腔内へのfree airや腹水は認めなかった。異物誤飲の病歴は聴取されなかったが,直腸Raに高吸収性の紡錘状構造物を認め,異物による直腸穿通と診断した。全身状態は安定しており,炎症は限局していると判断し,絶飲食と抗菌薬による保存的加療を行った。入院翌日に糞便中に異物排出があり,ナツメの種子だと判明した。経過は良好で入院9日目に退院した。ナツメによる消化管穿孔はその特徴的な形態上,魚骨穿孔に類似し,全身状態,腹部症状,CT検査所見を総合的に判断することが治療方針の決定に有用であると考えられた。