2021 年 41 巻 6 号 p. 443-447
症例は80歳,男性。来院2日前に呼吸苦と動悸が出現,来院当日に体動困難となり救急搬送された。血圧は救急隊接触時90/60mmHgで輸液を開始,来院時は151/77mmHgに上昇した。来院時意識はJCSⅠ-3で体温は37.9℃,脈拍は117/分,呼吸数は24/分。陰囊・肛門周囲の皮膚は黒色に変化,悪臭が強く,肛門管から腫瘤が露出。直腸診で血便を認めた。腹部造影CT検査で陰囊から会陰部,骨盤内に気腫を認めた。以上より肛門管癌の穿通によるフルニエ壊疽と診断し,ただちにデブリードマンと人工肛門造設を行った。抗菌薬はメロペネムとクリンダマイシンを投与した。肛門腫瘤の病理組織学的診断は肛門管癌であった。フルニエ壊疽は死亡率20〜50%と予後不良の疾患である。直腸癌・肛門管癌の穿通で発症するフルニエ壊疽はまれである。フルニエ壊疽の診療では,早期の診断・手術が良好な予後を得るために重要である。