日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
症例報告
術前診断にCTのMPR画像が有用であった回腸憩室穿通の1例
丹羽 弘貴高橋 亮鈴置 真人和田 秀之水沼 謙一植木 知音木村 伯子平野 聡
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 42 巻 6 号 p. 687-690

詳細
抄録

術前に回腸憩室穿通と診断し得た1例を経験したので報告する。症例は77歳,男性。1週間前から続く発熱・嘔吐・腹痛を主訴に受診した。来院時,右下腹部に圧痛があったが,腹膜刺激症状は認めなかった。単純CTのmultiplanar reconstruction(MPR)画像で回腸末端の憩室とその周囲の脂肪織濃度上昇・ガス像を認め,腸間膜内への回腸憩室穿通と診断した。保存治療の方針としたが,入院第3病日で腹部圧痛範囲の拡大・血液所見の増悪を認めたため,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。切除標本では,バウヒン弁より4cm口側の回腸に仮性憩室と腸間膜側への穿通が確認された。回腸憩室穿通は保存治療が奏効しない例が多く,虫垂炎や上行結腸憩室炎との鑑別を十分に行う必要がある。自験例では診断にはCT検査のMPR画像が有用であった。

著者関連情報
© 2022 日本腹部救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top