日本腹部救急医学会雑誌
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遷延する微細出血に対し術中内視鏡が有用であった小腸angiodysplasiaの1例
塚山 正市大村 健二吉羽 秀麿小島 一人奥田 俊之尾山 佳永子平沼 知加志浅海 吉傑寺田 卓郎渡邊 剛
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キーワード: 小腸出血, 術中内視鏡
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2004 年 24 巻 1 号 p. 83-87

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抄録

症例は76歳, 女性. 全身倦怠感を主訴に来院した際に, 高度の貧血を認めた. 大動脈弁置換術後で, ワーファリンの内服による抗凝固療法中であった. 上部消化管内視鏡検査で胃潰瘍を認めたため, ワーファリンの休薬とPPIを中心とした抗潰瘍治療を開始した. 潰瘍は治癒したが, 臨床的に消化管出血の遷延が疑われたために行った血管造影では, 遠位回腸壁が強染し, 早期静脈還流を認めた. 出血シンチグラフィーでは, 6時間後に回腸末端から上行結腸にかけて異常集積を認めた. その後も貧血は緩徐に進行し, 頻回の輸血を要したため, 小腸出血の疑いで第30病日に手術を施行した. 術中内視鏡による詳細な検索の結果, Treitz靱帯より60cmの空腸に微細な出血点を認め, 同部位を含む約5cmの小腸部分切除術を施行した. 切除標本の肉眼所見には異常を認めず, 病理組織学的検索では粘膜下層を中心に壁が薄く, 拡張した血管がみられ, angiodysplasiaと診断した. 術後はアスピリンの内服を開始したが, 1年3ヵ月を経過した現在, 再出血はみられていない.

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