日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
壊死型虚血性大腸炎の超高齢者救命例
剣持 邦彦宗 宏伸濱田 茂下河邉 智久佐々木 英中村 克己
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 26 巻 1 号 p. 77-80

詳細
抄録

症例は90歳の女性で, 下血・上腹部痛を主訴に受診した. 初診時左上腹部に限局性の腹膜刺激症状を認めた. 発熱は認めず, 血液生化学所見でも異常は軽微であったが, 腹部CT検査にて横行結腸左半部の腸管壁肥厚および腹水を認め, 虚血と腹膜炎所見を呈していることから大腸壊死と診断し緊急手術を施行した. 腸間膜動脈の拍動は良好であったが, 横行結腸が約20Cmにわたり硬化, 萎縮していた. 漿液性腹水貯留も認め非可逆性の虚血性変化と判断しHartmann手術を施行した. 病理学的には粘膜壊死に加えて筋層の虚血性変化が認められたが, 腸間膜動脈に血栓は認めず, 壊死型虚血性大腸炎の進行過程の像と考えられた. 術後経過はほぼ順調で術後40日目に軽快し転院した. 高齢で心不全を合併した症例であったが, 理学所見とCT所見を併せて迅速に手術適応と判断したことが救命につながったものと考える.

著者関連情報
© 日本腹部救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top