日本腹部救急医学会雑誌
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小腸皮膚痩を形成したRichter型大腿ヘルニアの1例
黒木 秀仁仁瓶 善郎三木 陽二代田 喜典西 直人宮永 忠彦
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2006 年 26 巻 1 号 p. 81-84

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抄録

症例は76歳女性. 左鼠径部の膿瘍に気付き, 近医を受診した. 抗生剤にて治療を行っていたが, 経過中に膿瘍が自潰し排膿が認められるも炎症の消退傾向がなく当院を紹介された. 当院受診時左鼠径部は径約5cmの範囲で発赤, 膨隆し, その中央は皮膚が欠損し同部より膿性の排液を認めた. 皮膚欠損部よりネラトンカテーテルを挿入し造影を行うと, 造影剤は回腸末端より約50cm口側の小腸に流入し皮膚との痩孔が確認できた. CT所見と合わせ, 大腿ヘルニアの嵌頓による小腸穿孔が皮下に膿瘍を形成したものと考え, 開腹手術を施行した. 小腸壁が約4分の1周にわたり大腿輪に嵌頓し壊死しており, その頂部が穿孔していた. 小腸部分切除, 大腿輪閉鎖を行った. 術後は順調に経過し退院した. 鼠径部の難治性皮下膿瘍の診察に際しては, Richter型大腿ヘルニアも考慮に入れておくべき病態の一つと考えられる.

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