2004 年 11 巻 1 号 p. 37-46
2002年1月にNIMEでは、全国の高等教育機関1,266校に対して障害をもつ学生とIT環境に関する郵送アンケート調査を行った。この調査は、大学入学後の障害者がどのような学習支援を受けているか、またITがどのように活用されているか、その基礎的実態を把握することを目的として行われたものである。結果としては、障害者を受け入れた大学では、教職員の個別対応や相談窓口が設置されるケースが増えているものの、包括的に大学全体としての対応を検討しているところは少ない。また障害者にとって有効な情報源であるはずのウエブサイトでの情報提供はほとんどなされていない実態が明らかになった。欧米諸国と比較すると、日本の大学教育の中で障害者支援および障害者へのウエブによる情報提供が根を下ろしているとは言いがたい。障害学生へのITによる学習支援やIT環境整備を構築していくことは、学生のニーズにあったフレキシブルな学習支援を築く上で、大学側に参考となる視座を与えてくれるだろう。