教育メディア研究
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放送教材の同時代性と開かれた作品性 : ジャーナリズム精神と映像解読力の育成(<特集>放送教育運動の総括から新たな発展のために)
市川 昌
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ジャーナル オープンアクセス

2003 年 9 巻 2 号 p. 2-10

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抄録

放送教材の原点は、同時代に生きる意味と開かれた作品性にある。25年間NHK教育番組ディレクターとして放送教材を制作してきた経験から、プラス要因であるべき技術革新の成果であるマルチメディア状況を生かしきれず、放送教材と他メディアとの差異化を進めるジャーナリズム精神の希薄化は問題を残す。放送教育から時代を読み取るノウハウが見失しなわれつつあることがマイナス要因となっている。この論考では映像解読力を言語社会学の立場からR.バルト、U.エーコのテレビ、映画論の「飛翔する意味作用」「開かれた作品性」というキー概念を発展させて、映像言語の批判的解釈による自己形成力と文化再生産への参加を重視する方法論として提言する。放送教材には他メディアにない常に新鮮な取材力と構成力、これを支える技術革新、特にデジタル化による学習支援と演出的可能性がある。放送教育環境としてのメディアリテラシーの鍵は、テレビ放送教材の「開かれた作品性」を導入とするジャーナリスト的センスを生かした意味表現のコンテキストを批判的に解読し、ネットワークで教育機能を拡げ深めることにある。アジアの民族文化との協調を提言し、飛翔する多様な映像解読力を生かし、再創造に積極的に参加できる教育番組の制作者と利用者のネットワークの強化を期待したい。

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© 2003 日本教育メディア学会
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