本稿は,本誌(『選挙研究』)第14号(1999年)に掲載された楠精一郎氏の「日本政治史における選挙研究」の成果を受け継ぎ,日本政治史における選挙研究の動向を明らかにするものである。具体的には,日本政治史における選挙研究が活性化した1990年代の研究状況を概観し,それを踏まえ,2000年以降の研究動向を振り返った。そして,地域レベルの国政選挙や地方選挙をとりあげる事例研究が増加し,選挙に関する歴史研究の基層が厚くなったこと,研究の新潮流としては,昭和初期の総選挙で用いられた選挙ポスターを読み解く研究や選挙違反を切り口として,近代日本の政治文化や政治社会の変容を描いた研究の出現などを指摘した。