近年,日本でも,富裕層と貧困層の経済的格差の広がりが問題視されるようになっている。経済格差の議論で特に問題とされるのは,所得格差よりも資産の格差である。資産は次世代に受け継がれることによって格差の定着・拡大を招くからである。政治参加に関する海外の先行研究では,所得や学歴,人種などによって政治参加や投票行動の程度が異なることが見いだされており,経済的格差の拡大が民主主義を損なう可能性が指摘されている。しかし日本における従来の研究では,社会経済的地位と投票参加との関連ははっきりしなかった。本稿では,2013年の参院選時に行われたCSES調査のデータを用いて,資産状況が投票行動に及ぼす影響を検討した。その結果,株・債券という資産の所持が投票参加に,また,住宅の所有が安倍内閣支持に,それぞれ正の効果を持っているという知見が得られた。