選挙研究
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市民参加のジレンマ
市民組織の選挙活動におけるフリーライダーの発生
鬼塚 尚子
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2000 年 15 巻 p. 139-151,189

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抄録

本稿は,自発的市民から成る運動組織においても個人の合理性と集団利益の達成との間の乖離から生じる「公共財問題」が内在する可能性を指摘し,市民参加の課題を提起するものである。市民団体とそこから派生した地方政党によって行われている選挙活動を分析対象とし,実験社会心理学的アプローチを交えて調査を行った結果,僅かながらも戦略的な非協力者(=フリーライダー)が存在することが明らかとなった。フリーライダーと単純(非戦略的)非協力者間においては政治関心の高低が,またフリーライダーと協力者間にはコスト認知の高低が質的差異として顕れた。現状ではこの市民組織が多くの献身的な成員によって支えられていることが確認されたが,それら成員が比較的短期間で新旧交替することを考慮すれば,市民組織はその維持のために常に新しい成員を取り込む必要があることも示唆された。今後は成員の追跡的調査の実施,分析手法の問題点克服が課題となろう。

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