2004 年 19 巻 p. 111-124,173
本論文は,初期帝国議会期の県会議員選挙を考察することによって当該期の選挙と地方利益の関係の一端を解明しようとするものである。この時期の選挙を扱った既存研究は存在するが,史料的に十分とはいえず,選挙に重要な役割を持つ地方利益を正面にすえた研究はほとんどない。
そこで本稿では,候補者の日記•金銭帳という重要な史料を用いる。その上で,(1)候補者同士の関係,(2)選挙運動の実態,(3)候補者の得票基盤の3点に着目し,県議選を分析することで,それが党派の枠をこえて地方利益と密接に関係していたことを明らかにし,選挙資金の使われ方も分析する。