日本原子力学会誌ATOMOΣ
Online ISSN : 2433-7285
Print ISSN : 1882-2606
解説
放射線生物学の最前線
DNA損傷機構と損傷修復の分子シミュレーション
横谷 明徳高須 昌子石川 顕一
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2014 年 56 巻 2 号 p. 81-85

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抄録

 放射線は,今や医療現場においては治療や診断など国民の健康生活に不可分な要素である一方,福島における低線量被ばくに対するリスク評価など,放射線に関わる研究者が取組まなくてはならない課題は数多くある。複雑な階層構造を持つ生物システムが放射線ストレスに対してどのように応答するかについては,分子,細胞あるいは個体など様々なレベルでの実験が行われている。一方,これらの実験により得られた知見から法則性を抽出し,放射線応答の一般化したモデルを構築することが求められる。コンピュータの高性能化により,最近ではこれらのモデル研究も新しい領域に入りつつある。放射線の照射により生じるDNA損傷・修復の初期の物理・化学的過程からDNA修復に関する生物学的過程及びアト秒領域におけるDNA-電子相互作用に焦点を当てた理論研究など,シミュレーション研究の最前線を解説する。

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© 2014 一般社団法人 日本原子力学会
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