2022 年 64 巻 10 号 p. 581-585
カーボンニュートラルと電力の安定供給の両立が重要な時期を迎えるなか,安全性確保の大前提のもと,この両者に貢献できる原子力発電の利用が不可欠である。原子炉圧力容器は,原子燃料と冷却材を内包する最重要機器の1つであり,また基本的に取り替えの対象とはならない機器であるため,運転中の経年劣化を考慮に入れた構造健全性の確保が必要となる。特に,中性子の照射により靭性が低下する「中性子照射脆化」という材料劣化事象に対しては,その状況を的確に把握し,運転管理に反映することが求められる。本連載では4回にわたって中性子照射脆化にかかる原子炉圧力容器の構造健全性について解説する。本稿では,構造健全性確保のための取り組みの概要を紹介する。