2012 年 29 巻 1 号 p. 21-25
Cinacalcet HCl(Cinacalcet)の登場はわが国の腎性副甲状腺機能亢進症(RHPT)の治療方針にも少なからず影響を与えている。原則的にはCinacalcetを含めた内科的治療に抵抗する症例は副甲状腺摘出術(PTx)の適応となる。わが国では長期間の血液透析を要する症例が多いため,長期的展望,経済性も含め,PTxの適応を考えるべきである。一方,手術でRHPTを改善させることが困難な病態が存在する。それらの症例にはCinacalcetはrescuer療法としてPTxに優先して適応になる。Cinacalcet導入後も術式には変化なく,副甲状腺全摘出後前腕筋肉内自家移植術が適切である。Cinacalcetが誘導すると考えられる組織学的変化は全ての副甲状腺の確認を困難とし,反回神経を含む副甲状腺周囲の癒着が認められることがあるので留意が必要である。