日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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特集1
「特集1.甲状腺に対するロボット支援手術」によせて
北野 博也
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2014 年 31 巻 2 号 p. 77

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抄録

内視鏡下に行う頸部手術は,1996年Gagnerが腹腔鏡を利用し,上皮小体を摘出したことから始まった。その後,甲状腺手術にも応用され,本邦では1999年高度先進医療として認可された。本法には,大別して全手術行程を腹腔鏡下に頸部より離れた位置から,腹腔鏡用の手術器具を用いて行う完全内視鏡下手術と,従来の手術器具を用い,鎖骨下の被覆される部位でかつ指が到達する範囲を切開し,内視鏡補助下に行う手術がある。両者にはそれぞれ利点と欠点があるが,両手術法の発展に本邦の外科医が貢献してきたことは間違いのない事実である。その後,ロボット支援手術の一つとしてda Vinci(Intuitive Surgical Inc.)が開発されたが,アームが大きく甲状腺手術には不向きであった。2006年,da Vinciを改良したda Vinci Sが開発された。da Vinci Sはda Vinciと異なり,操作性も格段に向上したので甲状腺手術にも応用されるようになった。本装置を用いることで,従来内視鏡手術では難易度の高かった結紮や縫合が容易となり,手振れのない精密手術が可能となった。また,立体視できることにより,内視鏡手術の最大の欠点であった平面画像を見ながら手術操作を行うことが不必要となった。基本的には完全内視鏡下甲状腺摘出術と同様に前胸部より行うことも可能であるが,韓国で行われている腋窩を切開して行う方法が主流となっている。しかし,本邦ではまだ頸部手術でのda Vinci Sの使用は認可されていない。

本特集では,1)da Vinci Sと最近開発されたda Vinci SIの概要について触れた後,2)ではこの分野の第一人者である武中篤氏に,各領域で行われているロボット支援手術の経験から,ロボット手術を導入することの利点と欠点を説明してもらった。更に,頭頸部外科領域でのロボット支援手術に関する薬事承認を目指している藤原和典氏に,甲状腺を含めた頭頸部外科領域での応用の現状を報告してもらった。また,本邦で数少ない甲状腺に対するロボット支援を経験している伊藤博之氏に,腋窩切開によるロボット支援手術の実際について執筆願った。最後に,本邦ではda Vinci Sの導入に時間がかかり,大きく諸外国より遅れた感があるが,本当に本手術法を甲状腺外科に導入することの意味について,数多くの内視鏡外科手術の経験がある高見博氏に意見をお聞きすることにした。

 

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