日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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特集2
「特集2.副甲状腺機能亢進症:最近の動向」によせて
山下 弘幸冨永 芳博
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2014 年 31 巻 3 号 p. 189

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抄録

副甲状腺機能亢進症(HPT)に対しては,外科的切除が唯一の確実な治療法である。原発性HPT(PHPT)は血清カルシウムを含む生化学スクリーニング検査の普及および人口構成の高齢化に伴い,診断頻度が増加している。そのような状況のなかで,古典的な症状を有する症例だけでなく自覚症状がはっきりしない症例も増えてきている。無症候性の場合,一般的に腫大副甲状腺が小さく局在診断が困難なことがある。腎性HPT(RHPT)は2008年の塩酸シナカルセトの保険収載をうけて手術数やPEITによるインターベンション治療が少なくなっている。2014年2月よりこのシナカルセトは副甲状腺癌ならびに副甲状腺摘出術不能又は術後再発のPHPTにおける高Ca血症に対する治療薬として使用可能となった。そのような状況を踏まえて,今回の特集を組ませていただいた。
まず,宮章博先生には軽症PHPT術後のQOL解析方法や結果について,海外での報告を中心に詳しく解説していただいた。筋肉,平衡機能や睡眠の改善が得られる可能性が高いとなると,NIHのガイドラインにあわなくても全身状態に問題がない症例には治癒手術をすべきとの意を強くするものである。横井忠郎先生には“特殊な病態と治療”について詳しく解説していただいた。カルシウムが正常範囲であるPHPTの機序の推察など興味深く,今後の研究を期待したい。中村道郎先生にはRHPTの病態や治療およびシナカルセトの副甲状腺に対する影響などにつき詳述していただいた。むすびに,“PTxを躊躇することで,血管や心臓弁の石灰化,骨密度の低下など患者にとって生命予後に直結する不可逆性変化をおこしてしまうこともあり,PTxへタイミングよく移行することと,質の高いPTxを行うことがわれわれ医療者にとって大切”との外科医(だけでなく腎臓内科)へのメッセージをいただいた。福成信博先生には主として,RHPTに対するインターベンション治療(主としてPEIT)の現状やガイドラインについて述べていただいた。シナカルセト導入後はPTxと同様にPEIT施行症例も少なくなっている。副作用でシナカルセットが使えない場合や外科的切除も困難な場合にのみ適応となるが,手技や術後の管理に精通する必要性を述べている。最後に,山本貴之先生には,シナカルセトの適応拡大後の原発性副甲状腺機能亢進症,副甲状腺癌に対する治療戦略についてまとめた最後に,“基本はその対象はあくまでも外科的切除不能なPHPTおよび副甲状腺癌による高Ca血症に対してであり,外科的切除の判断に迷うPHPTや副甲状腺癌そのものに対してではないことをわれわれ内分泌外科医は認識する必要がある”と締めていただいた。
時代とともにHPTの臨床像に変遷はあるが,外科的切除が唯一の確実な治療法であるという原則はかわらないことを認識すべきと総括したい。

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