2015 年 32 巻 3 号 p. 153
甲状腺癌に対する新たな分子標的薬の承認にさきがけ,日本甲状腺外科学会および日本内分泌外科学会では甲状腺癌薬物療法委員会を組織した。甲状腺癌を取り扱うのは外科系医師が多く,薬物療法になれていない者も少なからず存在する懸念が発生した。そこで甲状腺癌薬物療法委員会では,日本臨床腫瘍学会に連携プログラムを依頼したところ,ご快諾を得てこのシステムが始まった。その後日本頭頸部外科学会,日本甲状腺学会にもご賛同を得て現在は5学会で協定を結んだプログラムとなった。
具体的には外科系医師から腫瘍内科医への紹介,併診,コンサルテーションなど自由に選べ,地域性も考慮したシステムで,相談内容も有害事象の対策はもちろんのこと,薬物療法の適応そのものや,患者に関わる様々な問題点をチーム医療として解決していく手段として利用できることを願っている。
当院では甲状腺癌に対する分子標的薬の導入はすべて入院で行っている。入院と同時にコンサルテーションを行い入院日から腫瘍内科の併診,また病棟および外来看護師,薬剤師とも連携,有害事象発現時は皮膚科など他の診療科まで即時に対応があり連携システムがうまく起動しているように感じている。患者退院後の外来フォローも腫瘍内科医が外来看護師や化学療法室看護師と連動して,主治医以上に細かく観察してもらえるため大変重宝している。
このような有益なシステムであるが,連携登録システムによる登録数を見るとまだまだ浸透しているとは言いがたい。今回の特集では連携がうまくいっている代表的な施設からの実情を報告していただき,うまくいくコツなどをご伝授いただきたいと願った。また,このプログラムの臨床腫瘍学会側の窓口となった国立がん研究センター田村研治先生にパートナー側からのお話をご依頼した。