2015 年 32 巻 4 号 p. 295-298
症例は59歳女性,無症状。生理不順,不妊症で精査された折,超音波検査で甲状腺右葉に3×4×5mmの低エコー不整な結節を認めた。穿刺吸引細胞診はクラスⅢであったが乳頭癌が否定できないため手術を施行した。CT検査では右鎖骨下動脈起始異常を認め,非反回下喉頭神経の存在が示唆された。術中,顔面神経刺激装置で下喉頭神経を検索しながら手術を行った。右下喉頭神経は甲状腺下極のレベルで迷走神経より分岐し,Toniato分類ⅡB型と考えられた。右下喉頭神経を温存し,甲状腺右葉切除術およびD2a郭清を施行した。病理組織検査ではPapillary carcinoma T1a Ex0 N0 M0 StageⅠと診断した。術前画像検査で非反回下喉頭神経の存在を疑うことが重要であり,その際に顔面神経刺激装置を用いることでその走行を同定しえた。