日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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特集2
甲状腺術後嗄声の頻度およびリスク因子と音声改善手術の問題点
小川 真
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2016 年 33 巻 4 号 p. 224-227

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抄録

反回神経麻痺による嗄声は,副甲状腺機能障害と並び,甲状腺摘出後に生じる主要な合併症の1つとなっている。片側反回神経麻痺により声帯の内外転運動が障害されると,発声時の声門のスリット形成が妨げられ,ベルヌーイ力と声門下圧の交互作用による声帯振動が生じにくくなる。甲状腺摘出後の反回神経麻痺の頻度は,一過性および永続的なものを含めて1~13.3%と報告されており,再手術,悪性腫瘍,頸部郭清の併施,反回神経麻痺を同定しない手術などがリスク因子とされている。反回神経麻痺による嗄声の治療に関して,麻痺が一過性である可能性があるために,発症後6カ月以内の姑息的治療とそれ以降の永久的な治療がある。姑息的治療として,音声治療および局所麻酔下声帯内注入術の有効性が報告されている。しかしながら,局所麻酔下声帯内注入術については,本邦の医療保険の事情からあまり行われていないのが現状である。永久的な治療法として,甲状腺手術後の頸部の瘢痕形成のために通常の喉頭形成手術の施行に難渋するため,甲状軟骨翼状板外側下方を開窓して行う披裂軟骨内転術,神経吻合術,神経筋移植術などの術式が選択されることがある。

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