2017 年 34 巻 2 号 p. 102-107
甲状腺癌気管浸潤例の多くは表層浸潤で層状切除(shaving)が可能である。しかし全層切除の場合気管再建(1期もしくは2期)を要する。通常1期的再建は環状切除後直接縫合を,そして2期的再建は気管切除後気管皮膚瘻作成と瘻閉鎖のための再建を指す。しかし1期的再建には縫合不全といった致命的合併症や周術期QOL低下といった欠点があり,また2期的再建は気管変形を含め気管皮膚瘻閉鎖に難渋する点や整容性の問題がある。両者の欠点を補う方法として,耳介軟骨埋め込み後の「窓状切除+1期的耳介軟骨DPflap再建」を推奨する。本法はそれ自体で気管frame形成に寄与し,安全確実,かつ根治性を有する。縦隔伸展例,既気管切開設置例,埋め込み後の急速増大例(2期的再建へ移行),など応用範囲も広く,長期予後にも優れる。非喉頭浸潤気管全層浸潤例の殆どに適応可能な標準術式である。