日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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症例報告
低分化癌が併存した甲状腺粘表皮癌例
松永 桃子渡邉 佳紀田中 信三平塚 康之吉田 尚生草野 純子吉松 誠芳森田 勲
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2017 年 34 巻 2 号 p. 132-138

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抄録

甲状腺粘表皮癌は非常に稀な癌腫であり,これまで国内外合わせて100例未満の報告しかされておらず,直近の10年間に関しては18例の報告がなされているのみである。低悪性度であり,予後良好とされるが,低分化癌や未分化癌との合併例では予後不良である。分化癌,未分化癌や橋本病との合併,また粘表皮癌内での扁平上皮化生の存在などから術前診断は困難と考えられている。今回われわれは,術前診断に苦慮した甲状腺粘表皮癌例を経験したので報告する。患者は76歳女性,術前に穿刺吸引細胞診を三度行い,三度目で悪性リンパ腫の疑いがあり,開放生検を行った。生検では異型扁平上皮を採取し,甲状腺扁平上皮癌と診断,甲状腺全摘,D3b郭清術を施行した。術後の病理結果では甲状腺粘表皮癌と低分化癌を合併したものと診断された。現在,術後9カ月経過しており,再発所見はないが慎重な経過観察を要する。本症例の報告と近年の本邦・海外における文献の考察を行う。

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