日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
特集1
「特集1.甲状腺外科医に知ってもらいたい病理診断学ポイント」によせて
加藤 良平
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2017 年 34 巻 2 号 p. 75

詳細
抄録

甲状腺腫瘍の分類は甲状腺癌取扱い規約第7版が発刊された。この第7版の病理部分については写真,記述を含めて内容が刷新された。この規約第7版の細胞診分類には,甲状腺ベセスダシステムが採用されていることは周知のごとくである。一方,現在は内分泌腫瘍の新WHO分類が出版されつつある。このWHO分類の甲状腺腫瘍分類にはNIFTPをはじめとして新しい腫瘍概念が記載されている。ご存知のようにWHO分類は国際的スタンダードになるもので,そこに記載される事項についてよく理解しておく必要がある。このような病理学的な分類には,それぞれの組織型に対する臨床的な対応が重要であることはいうまでもない。そこで,本稿では近年の甲状腺腫瘍の変革を意識しながら,実際に患者の治療にあたる外科医に是非とも知っておいて欲しい事項を4つ抽出して特集を組むことにした。これら4つのテーマはそれぞれが独立した内容で,オムニバス的記載となるものだが,甲状腺腫瘍の実践的な病理学を理解する上で不可欠,重要なものと考える。いかに,テーマの要約を述べていく。

第一に,近く発刊されるWHO分類では良悪性の境界病変の概念が記載されている。これはNIFTP,UMP(FT-UMO,WDT-UMP)という名前で呼ばれている。この臨床的扱いについては現在もなお不明確なところはあるが,是非とも考えていただきたい概念である。第二に,濾胞癌の術前診断は難しいという定説であるが,ときに術前診断が可能な濾胞癌もみられる。診断可能な濾胞癌について,甲状腺腫瘍診断に豊富な経験を持つ病理医から寄稿していただくこととした。第三のテーマとして,近年知見が集積されつつある甲状腺腫瘍の遺伝子診断を取り上げてみた。甲状腺腫瘍の組織型は現在形態診断が行われているが,それぞれの組織型の遺伝子異常の基本的な違いを平易に記載し,その鑑別診断における遺伝子検出の有用性について記述することにした。第四に,甲状腺分化癌は予後良好な腫瘍であるが,稀に予後不良となるものが存在する。近年,予後不良な亜型の存在がクローズアップされている。このような分化癌は頻度は低いものの,臨床的取り扱いは分ける必要がある。

本特集では,上記の4つのテーマについて,なるべく図や症例を用いて分かりやすく記述していくことにする。これからの外科診療に少しでもお役に立てれば幸いである。

 

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
feedback
Top