日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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特集2
「特集2.進行甲状腺癌に対する外科的治療」によせて
家根 旦有
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2017 年 34 巻 2 号 p. 97

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抄録

甲状腺外科の診療において,進行甲状腺癌に対する手術方法の選択には日頃から悩むことが多い。その理由の一つには甲状腺癌の場合は進行癌といえども予後は比較的良好であることから,根治性だけでなく臓器温存・機能温存を考慮しなければならないからである。

進行甲状腺癌はTNM分類だけで手術方法が決定されるものではなく,病理の悪性度や患者の全身状態も考慮すると患者それぞれに病態は異なり,それらに対応する手術方法を考慮しなければならない。特に気管,食道,反回神経に浸潤している進行癌では,如何に根治性と臓器温存・機能温存を両立するかについて手術の現場で判断に迷うことも多い。そこで今回の特集は「進行甲状腺癌に対する外科的治療」として企画を立てさせていただいた。

今回の企画内容は,私が日頃から悩んでいて,たぶん多くの術者も悩んでいるだろうと思われるテーマを選び,それに適した執筆者に原稿をお願いした。

名古屋大学乳腺・内分泌外科の菊森豊根先生には多くの気管端々吻合症例の経験から「甲状腺癌気管浸潤に対する気管端々吻合」,大阪警察病院内分泌外科の鳥正幸先生には初回手術時に再建を行う「甲状腺癌気管浸潤に対する1期的再建」,草津総合病院頭頸部外科センターの森谷季吉先生には端々吻合や1期的再建ができないような高齢者やリスクの高い患者に対する「甲状腺癌気管浸潤に対する2期的再建」,神戸大学耳鼻咽喉・頭頸部外科の大月直樹先生には手術方法も難しい「喉頭・縦隔に浸潤する高度進行甲状腺癌」,京都大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科の大森孝一先生には近い将来に臨床応用が始まろうとしている「気管の再生医療」について解説していただいた。いずれの論文も充実した内容で,進行甲状腺癌における外科的な問題点について詳細にわかりやすく解説していただいた。

日頃多くの術者が悩んでいると思われる進行甲状腺癌に対する対処方法の一助になれば幸いである。

 

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