日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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症例報告
甲状腺乳頭癌術後に発症したたこつぼ心筋症の1例
林 昌俊栃井 航也丹羽 真佐夫高橋 啓川村 紘三小久保 健太郎
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2017 年 34 巻 3 号 p. 191-194

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抄録

症例は72歳,女性。健康診断で前頸部腫瘤を指摘され近医に受診,当院に紹介された。前頸部左側よりに超母指頭大,弾性硬な腫瘤を触知した。穿刺吸引細胞診はclass V,乳頭癌疑いで甲状腺全摘術,D2b郭清を施行した。病理結果はUICCによる分類でpT3,pN1b,M0,stageⅣAであった。術後,第3病日に突然の呼吸困難が出現したが約30分で消失した。第4病日に不整脈が出現,12誘導でⅡ,Ⅲ,aVF,V2~6に陰性T波を認めた。冠動脈造影では有意狭窄を認めず,左室造影でたこつぼ様の心尖部の無収縮を認め,たこつぼ心筋症と診断した。胸部症状なく,駆出率(EF)が55%あり,経過観察し術後第11病日に退院した。たこつぼ心筋症発症後第21病日にはEF71%に改善した。本疾患は多種のストレスとの関連が指摘されており甲状腺周術期にも起こりうる疾患である。甲状腺周術期に循環器合併症を認めた場合には念頭に置く必要があると考えられた。

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