日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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特集2
我が国のRAI治療の現状―海外の現状との比較,RAI不応性の判定について
中駄 邦博
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2018 年 35 巻 3 号 p. 179-191

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抄録

放射性ヨウ素(RAI)はUICC stageⅢ,Ⅳの甲状腺分化癌患者の予後を改善し,stageⅡの患者の一部でも予後を改善する。2015年のATAのガイドライン改訂に伴って,RAIの適応は臨床病理所見に基づくリスク評価によって判断される事になったが,診断量のI-131を投与して撮影したSPECT/CTがリスク評価に有用とする考えも受け入れられつつある。遠隔転移の治療において,欧米では個々の患者について骨髄の最大耐用線量を算出し,初回RAIの投与量を大幅に増やす潮流がある。しかし,日本では最大耐用線量法の実施は一部の大学病院以外では困難と考えられる。分子標的治療薬開始の大前提となる“RAI抵抗性”の判定方法は海外でも議論があるが,日本の実情に即した基準が提唱されている。転移巣におけるI-131の集積性を判断するための全身シンチグラフィとSPECT/CTにおいてはTSH刺激とヨウ素制限が適切に行われている事が必須であるが,厳格なヨウ素制限の実施は容易ではない。

日本におけるRAIの根本的な問題として,放射線治療施設・病室の恒常的不足,排水や換気設備などへの初期投資と維持費が莫大な一方で著しく低い診療報酬,病室からの退出基準などに関する厳しすぎる法的規制,などが未解決のままで,将来の課題は多い。

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