Official Journal of the Japan Association of Endocrine Surgeons and the Japanese Society of Thyroid Surgery
Online ISSN : 2758-8777
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2020 Volume 37 Issue 3 Pages 170

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甲状腺・副甲状腺外科手術において,反回神経や上喉頭神経外枝の機能障害を避けることが重要である。術中にこれらの神経を目視下に同定することがゴールドスタンダードであるが,腫瘍径が大きい場合,再手術症例,検索時の術野の狭さや走行のバリエーションにより神経の同定に苦慮することも少なくない。また同定が難しい症例を術前に確実に予測することは困難である。

平成26年度(2014)診療報酬改定において手術医療機器等加算として「K463」甲状腺悪性腫瘍手術および「K465」副甲状腺悪性腫瘍手術において,「K930」脊髄誘発電位測定等加算(2,500点)が認められた。手術中に神経を刺激し,支配筋肉の誘発筋電図を確認する術中神経モニタリング(intra operative nerve monitoring:IONM)が反回神経や上喉頭神経外枝の検索において目視を補助する方法として,施行できるようになった。平成30年度(2018)診療報酬改定において「K462」バセドウ甲状腺全摘(亜全摘)術および「K462-2」内視鏡下バセドウ甲状腺全摘(亜全摘)術,「K463-2」内視鏡下甲状腺悪性腫瘍手術が追加された。令和2年度(2020)診療報酬改定において「K461」甲状腺部分切除術,甲状腺腫摘出術,「K461-2」内視鏡下甲状腺部分切除術,甲状腺腫摘出術が追加され,副甲状腺腺腫過形成手術を除いたすべての甲状腺・副甲状腺手術においてIONMが保険適用となった。また診療報酬も3,130点に引き上げられた。IONMの導入が進むことで,質の高い手術を多くの患者さんに提供できるようになると期待されている。

欧米では四半世紀ほど前よりIONMが導入されているが,モニタリング法のさらなる品質向上および不確実性の改善が必要との反省のもとに,2011年に反回神経および2013年に上喉頭神経外枝同定におけるIONMの標準化を目指したガイドラインが作成された。2018年には第2版が出されたが,いずれにおいてもIONMにおいては適切な運用が不可欠であることが示されている。我が国においてはIONMの安全かつ適正使用に関する研究,教育の推進を目指して2015年に甲状腺副甲状腺術中神経モニタリング研究会が発足した。回を重ねるたびに議論も深まり,多くの情報を共有することができるようになったが,これまで本誌の特集として取り上げられていなかった。そこで今回,IONMガイドラインに精通し,甲状腺副甲状腺術中神経モニタリング研究会の世話人の先生を中心に甲状腺・副甲状腺外科のエキスパートの先生方に執筆を依頼した。

米国においては年間100例以上の手術を担当する外科医のみならず若手の外科医がIONMの使用頻度が高いと報告されている。今回の特集が,新たにIONMの導入を検討している内分泌外科医,特に若手の先生方の一助になれば望外の喜びである。

 

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