2021 年 38 巻 3 号 p. 185-190
甲状腺・副甲状腺手術後の頸部観察において頸部腫脹は術後出血を予測する上で重要な所見であるが,観察者によって大きく差が生じることがある。当院では術後頸部腫脹を頸周囲径の測定(以下,頸周囲測定法)を用いて客観的に評価している。本研究では頸周囲測定法が術後出血を予測する上での有用性について検討を行った。
2013年から2020年までの7年間に当院で行った甲状腺・副甲状腺手術症例6,300例を対象とした後方視的検討を行った。術後出血にて再開創を要した63例(以下,開創群)と期間中央で連続する1カ月間の手術症例で術後出血を認めなかった66例(以下,非開創群)の頸周囲径を比較検討した。
結果,頸周囲径の増加は非開創群では平均0cm(-1~+1cm),開創群では平均+3cm(0~+7cm)であり開創群では非開創群に比べ頸周囲径の増加が確認された(p<0.05)。術後頸部腫脹の観察において頸周囲測定法は有用であると考えらえた。一方で頸周囲径の増加を認めない症例が3.2%あり,頸部腫脹が乏しい術後出血もあるためドレーン排液量・性状など複数のモニタリングを併用し観察を行うことが重要と考えられた。