18 巻 (1992) 1 号 p. 11-17
菌体から効率よくタンパク質を抽出する方法としてアルカリ処理, 酵素処理, 自己消化処理, 物理的処理にっいて試験を行った。
その結果, 物理的処理の凍結粉砕処理が最も優iれており, 約82%と高いタンパク質抽出率を得たので, この凍結粉砕処理法を用いて分離タンパク質を調製し, その性状について検討した。分離タンパク質の溶解性はpH4.5付近で最少となり, また, アミノ酸組成を調べた結果, アスパラギン酸, グルタミン酸, グリシン, アラニン, バリン, ロイシン, リジンの含量が多く, 大豆タンパク質とほぼ同様な組成であった。
なお, ペプシンおよびトリプシンによる分解率を試験したところ, 両酵素とも大豆分離タンパク質に比べ, 菌体より調製した分離タンパク質を良く分解し, 特にトリプシンでは約75%の分解率であった。
分離タンパク質の機能特性として, 乳化性, 乳化安定性, 保水性, 保油性にっいて調べたところ, 乳化安定性, 保油性は大豆分離タンパク質に比べ優れており, 乳化性についてもpH10の条件では高い値を示した。
このように分離タンパク質は消化性および機能性に優れていることが明らかになったため, 肉製品への利用の可能性を考慮し, 次の試験を行った。豚もも肉に菌体および分離タンパク質を添加し, 調理後の肉色の変化および物性にっいて検討した。その結果, 肉色の明度は両者の添加によりやや低下したが, 赤色度は分離タンパク質添加により減少する傾向が見られ, 黄色度は両者の添加によりやや増加することが認められた。また, 物性については菌体および分離タンパク質を添加することによって硬さは増加したが, 疑集性はやや減少した。付着性は添加量により差異が見られたが, 一般に増大する傾向が認められた。
以上の結果から, Fusarium菌体より調製した分離タンパク質は, アミノ酸組成, 乳化性, 保油性などの機能特性も大豆タンパク質に比べて遜色なく, 消化率も高く, 飼料および食品素材として使用し得るものと考えられた。