28 巻 (1981) 1 号 p. 16-23
市販酸化トウモロコシ澱粉の濃厚な熱水溶液から,収率7~8%でえられた球状沈殿物(直径6~7μm)の性質をしらべた. (1) 沈殿物のX線回折図はもとの酸化澱粉のA形図とは明らかに異なっており,ピークの位置はアミロース・パルミチン酸錯体のV形図にかなりよく似ていた. (2) 沈殿物からのメタノール抽出物の量は,アミロース・パルミチン酸錯体からのそれに匹敵し,ヨウ素呈色がこの抽出物によって阻害された. (3) 沈殿物はトウモロコシ澱粉および酸化澱粉のいずれよりも低い固有粘度を示した. (4) メタノールで脱脂した沈殿物のヨウ素呈色液の吸収スペクトルは,酸化澱粉からチモール法で調製したアミロースとよく似ており,680nmにおける青価は各種アミロースに匹敵する高い値を示した. (5) メタノールで脱脂した沈殿物のヨウ素親和力は14で,アミロース類の17よりやや小さかった. (6) 過ヨウ素酸酸化法によると,この沈殿物の糖部は平均鎖長約100AGUの分枝のほとんどないアミロースによって構成されていることを示した. (7) 沈殿物糖部のβ-アミラーゼによる加水分解率は66%であったが,これは分子中の酸化された構造に基づく加水分解阻害によるものと思われた. 以上の結果から,この球状沈殿物は酸化トウモロコシ澱粉中の比較的短いアミロース分子(酸化された構造を含む)が,澱粉中の脂質とヘリックス形錯体をつくり,それらが球状に集合して生成した結晶であろうと結論された.