澱粉科学
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L-アスコルビン酸とD-イソアスコルビン酸ナトリウムの家庭用自動製パン装置による製パン効果
森田 尚文張 麗山口 幸宏
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1993 年 40 巻 1 号 p. 35-40

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抄録
 L一アスコルビン酸(L-AsA)の異性体であるエリスロビン酸ナトリウム(D-AsA-Na)を用い,製パンの品質改良剤としての効果を検討するとともに,これらの添加物の小麦粉ドウおよび澱粉に対する影響を検討し,次の結果を得た. 1) AsAオキシダーゼを含む中性緩衝液中の30分の反応で,D-AsAは約50%,レAsAは約90%酸化された. 2) L型,D型のAsA(100 ppm)を製パン材料に添加後の製パン中のドウに残存する添加物量は30分のミキシングで,D-AsAは約10%, L-AsAでは約4%であった. 3) D-AsA-Na 20 ppmの添加により焼成後のパンの比容積は,無添加のコントロールに比べ明らかな増大効果がみられたが,その添加量が多くても少なくても減少した. 4) 混捏中のドウの物性をファリノグラフィーにより調べるとD-AsA-Naの添加によりD-AsA,コントロールに比べ安定性も長く,良好な結果が得られた.また,ドウの構造変化をSEMによって調べたところ,繊維状の部分も認められL-AsAとコントロールの中間的な変化を示した.ドウ中の澱粉の糊化ピーク温度は81℃ となり,L-AsAとコントロールのほぼ中間的な値を示した. 以上の結果,D-AsA-Naの添加によりグルテン分子中のSH基がおだやかに酸化され, SS架橋結合を形成し,グルテンの澱粉粒の包み込みに変化がおこりLンAsAとコントロールのほぼ中間的な挙動をしたと考えられる.
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© 日本応用糖質科学会
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