Journal of Applied Glycoscience
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新形質米における改良したアルカリ法による米澱粉の調製
松永 直子高橋 節子貝沼 圭二
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2003 年 50 巻 1 号 p. 9-13

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抄録

 短時間に米澱粉を調製する方法について,アルカリによる洗浄条件を検討した.試料は二種の新形質米,ホシニシキ(高アミロース)ならびに西海糯227号(多収糯)とし,基準米として日本晴を用いた.米澱粉は,米粉を5倍量の0.05または0.075M水酸化ナトリウム水溶液に1または3回懸濁し,1M塩酸で中和・水で洗浄後,遠心分離により抽出し,得られた米澱粉の化学・物理的性質を従来法と比較した.澱粉の調製に要する時間は,従来法の1-3週間に対して本方法は2日間と短縮され,本方法により抽出された米澱粉はタンパク質含量と損傷澱粉量が少なかったが,収量は従来法に比べて低くなった.粳種の米澱粉はフォトペーストグラフイーならびにラピッドビスコアナライザーにおいて調製法による差が認められたのに対し,糯種においては差が認められなかった.粳米澱粉中にリン脂質として存在するリンの含量は従来法による米澱粉が最も少なく,調製時における脂質の分解により流出したと考えられた.本方法で調製された澱粉のナトリウム含量は従来法よりも高く,ナトリウムを減らすためには中和後の水での洗浄は8回を要した.以上の結果より,米澱粉の抽出方法として,本方法の0.05M水酸化ナトリウム水溶液洗浄3回・中和後の水での洗浄8回が従来法に変わる方法として用いられることが明らかになった。ただし,高アミロース米ならびに糯米については0.05M水酸化ナトリウムによる洗浄を1回に減じることが可能であった.

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