J-STAGE トップ  >  資料トップ  > 書誌事項

地下水学会誌
Vol. 52 (2010) No. 3 P 247-260

記事言語:

http://doi.org/10.5917/jagh.52.247

論文

浅間山周辺における湧水中の溶存炭酸(DIC)の起源、形成プロセスの解明や水質に対する火山ガスの影響を定量的に評価することを目的に、DICの炭素同位体比(δ13CDIC値)の測定を行った。また、その起源と考えられる火山性CO2と土壌CO2の炭素同位体比の測定を、それぞれ地獄谷噴気および山麓の数地点において実施した。
浅間山周辺の湧水は、水温・電気伝導度・水質組成などの物理化学特性に基づき9つの湧水群(A~I)に区分できる。湧水群Bを除き、DIC濃度が高いほどδ13CDIC値も高くなるという関係から、対象地域における湧水中のDICの起源は、同位体比の低い有機物起源の土壌CO2と、火山活動に由来するマントル成分を含む深部起源である火山性CO2の二成分混合によって説明できることが判明した。この結果に基づき、DICと平衡状態にあると仮定されるCO2の同位体比(δ13CCO2値)を用いて、DICに対する火山性CO2の寄与率の計算を行った。その結果、水質特性から火山ガスの影響が推定された山麓に位置する湧水群C、F、Hでは40~60%程度、そして火口に近い山体斜面に位置する湧水群Iでは90%以上もの火山性CO2が、湧水中のDICに寄与していることが明らかとなった。一方で、湧水群A、D、E、Gについては火山性CO2の寄与がほとんど無く、水質から得られた結果との明瞭な対応関係が確認された。
また、他の湧水が示す二成分混合の傾向から大きく外れる鬼押出し溶岩流末端部に位置する湧水群Bでは、本地域で最も高いδ13CDIC値を示す一方で、DIC濃度が低いという特徴が認められた。これは、火山性CO2の影響を受けた地下水が、その流出過程において通気性の高いクリンカー部を流動するため溶存CO2の脱ガスが起こり、δ13CDIC値が上昇した結果と考えられる。

Copyright © 2010 公益社団法人 日本地下水学会

記事ツール

この記事を共有